一般

【網戸はいつからある?】網戸の歴史を徹底解説

網戸は、今や私たちの生活に欠かせない設備になっています。私たち人間は健康的な生活を送るため、定期的に窓を開けることで、家の中に風を取り入れています。

この時、網戸がなければ虫も一緒に部屋の中に入ってきてしまいます。中でも害虫は、様々な形で人間に害を与える生き物。

時には病気の原因にもなります。そんな害虫の侵入を防いでくれているのが網戸です。

私たち人間に害を与える虫は、古来より存在していました。では、網戸ができる前は、どのようにして害虫による被害を防いでいたのでしょうか?

今回は、網戸の歴史についてまとめました。今、私たちの快適な生活を守ってくれている網戸がいつ頃できたのか、その時期についてもお話します。

昔は「蚊帳」が網戸の役割を担っていた

蚊帳

今よりずっと昔、網戸という設備はありませんでした。しかし、似たような役割を持つ設備はありました。

それが「蚊帳(かや)」です。布団の周りがネットで囲われている様子を、ドラマや映画で見たことがある方は多いのではないでしょうか?

天井から吊り下げられ、布団の周りを囲んでいるネット。それが蚊帳です。蚊帳は、小さな虫の侵入を防ぐ帳(とばり)として使われていました。

蚊帳に関する歴史でもっとも古いのは、『播磨国風土記』に記録されている記述です。

応神天皇が播磨の国を巡幸する際に訪れた「賀野の里(かやのさと)」で簡易的な御殿を作り、蚊帳を張ったと記録されています。

同時期の歴史書である『日本書紀』にも、蚊帳に関する記述があります。

日本書紀では、中国の呉から蚊帳づくりの女性技術者「蚊屋衣縫(かやのきぬぬい)」が渡来したことが記述されています。

以上2つの記述により、蚊帳は奈良時代より前に、中国から伝来したと考えられています。

この頃は、絽(ろ)や紗(しゃ)の絹織物、麻布の蚊帳が、主に位の高い貴族の住まいで使われていたようです。

庶民の間に蚊帳が広まった江戸時代

江戸時代の蚊帳

奈良時代から時を経て戦国時代になると、現在の滋賀県にあたる近江の国で、麻の糸を使った蚊帳づくりが始まりました。

近江の国は、琵琶湖の湿気により蚊帳づくりに適していたそうです。

戦国時代の蚊帳は大変な高級品。戦国武将の娘であるお姫様などは、輿入れの道具として扱っていたようです。

その後、江戸時代の後半になると、ようやく一般庶民の間で蚊帳が広まります。この時代にはいくつもの蚊帳屋があり、木綿製や紙製の蚊帳も出現しました。

初めて網戸が作られたのは1600年代

蚊帳に代わる網戸が初めて作られたのは1660年、ドイツでのことだと言われています。ただし、この頃に作られた網戸は、現代で知られている網戸とは異なる形状をしていました。

言うなれば“金属製の網”のような形です。しかし、この金属製の網が、現代の網戸の原型になっています。

日本で初めて網戸が作られたのは大正の頃だと考えられています。明治42年、つまり1909年に国産のガラスが生産された後、大正に入ってからは、ガラスを大量生産する生産法が広く普及しました。

これにより、ガラスを使った窓もまた広まっていきます。そして、当時の大工から分業していた建具屋が、虫の侵入を防ぐ目的で、窓ガラス代わりに窓にはめ込む、「はめ込み式網戸」を作ったと言われています。

この頃作られたはめ込み式網戸には、蚊帳の素材や金網が使われていました。

ところが、窓メーカーや網戸メーカーはまだ存在していません。はめ込み式網戸も普及には至りませんでした。

江戸時代の蚊帳

昭和30年代、現代の網戸の形に

江戸時代の蚊帳

網戸が普及しはじめたのは、昭和30年代に入ってからです。次の2つの出来事がきっかけでした。

①合成繊維による防虫網が開発された

昭和30年代に入り、国内初の合成繊維による防虫網が開発されます。この防虫網は、素材として使われていた塩化ビニール系樹脂の名から「サラン」とも呼ばれました。

②アルミサッシが登場した

昭和35年から40年、つまり1960年から1965年にかけて、アルミサッシが登場し、普及していきます。

これにより網戸のフレームにも、木ではなくアルミが使われるようになりました。

合成繊維による防虫網の開発と、アルミサッシの登場。この2つの出来事によって、私たちがよく知る形に生まれ変わった網戸は、日本に普及しはじめました。そして今に至ります。

江戸時代の蚊帳

さらに充実していくと予想される網戸商品

現在のような形状の網戸が生まれてから約50年が経ちました。現在の網戸は、昭和30年代に比べてさらに形状のバリエーションが増えています。

セイキの商品を例に挙げると、一般的なパネル網戸の他に、ネットがプリーツ状になっている 「アコーデオン網戸」 、ネットを巻き取る形で収納できる「ロール網戸」、扉が2つに折れて開閉する「折戸式網戸」といった種類があります。

形状だけではなく、機能もさらに充実しました。虫の侵入を防ぐ目的はもちろん、ホコリや花粉のような有害物質をブロックする目的でも使えるようになっています。

機能によってはプライバシーを守ったり、大事なペットの逃走を防いだりすることも可能です。

今後も人々の快適な生活を守るべく、様々な形状・機能を持つ網戸が作られていくと予想されます。